DASSAI DESIGN AWARD 2019

去る2019年7月26日、六本木 文喫にてDASSAI DESIGN AWARD 2019オリエンテーションが開催されました。
平日夕方の開催にも関わらず、当日は多くの方にご参加いただき、参加者の方のアワードへの関心の高さが伺い知れました。
オリエンテーションの中では、求める提案や評価のポイントについて説明があり、実際に「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」を試飲しながら参加者の皆さんと獺祭の世界感を共有することができたようです。

なお、この様子は動画でもご覧いただくことができます。


以下 桜井氏。一部割愛します。

獺祭の考え方

今日は獺祭がどういう考え方で作られているのか、お越しいただいた皆さんにお伝えさせてもらいたいと思います。
35年前、旭酒造を継いだ頃の写真です。

当時の酒蔵です。典型的な地酒の酒蔵でした。

それがこういう建物になりました。
一見、ビジネスがものすごく成功したのだろうと、売上を追いかけたのだろう、とそう思われるかも知れません。
結果としてそうなったわけで、否定はしません。しかし、これを目標にしたわけではありません。そうせざるを得なかったのです。

たとえば、よくある話ですが、厨房が小さく客席が広いレストランはおいしいでしょうか。
だいたいおいしくないのではないでしょうか。
酒蔵も一緒です。酒造りのスペースが広くないとだめ、というのが私どもの考えです。
最大のスペースを取ったことで、12階建で高さがおよそ60メートルとなりました。

酒蔵は山口県岩国市にあります。周囲は集落の人口が30名をきる小さな村です。そういうところで酒蔵をやっています。
酒というのは、米を原材料にするのでなかなか日本の農業社会とは切っても切れません。
酒造業界が農業社会から提供してもらっているのは原材料だけではありません。労働力もです。
戦後、経済発展とともに、日本の農業社会が変化していく、そんな中で農村の杜氏という職人たちは減っていきました。
大企業は機械化が進みました。全国の小さい酒蔵は"幻の日本酒"を目指しました。
私達も、どうせやるなら当時の「越乃寒梅」のような、かっこいい酒蔵として生き残りたかった。
しかし、杜氏はいなくなり農村社会はさらに疲弊していきます。
そこで、どうすれば良いかを私達は考えました。
「杜氏のあたまを外に出してしまえばいい!」
経験と勘、という言葉がありますが、経験とはデータの蓄積、勘とはデータの蓄積からの思考の飛躍です。
これを外に出せばいい、と考えました。

私達はデータ集積と管理を徹底していきました。
しかし、機械的にやるかといったらそうではない。
人間の手でやるんです。酵母や麹の管理などの微細なところは人間にしかできません。

これまでの地方はある時期まで低成長社会でした。
だから幸いにも優秀な労働力=人材がたくさん余っていたのです。
地方経済が疲弊していたことが皮肉にもプラスに働いたのです。

日本酒業界ではこの40年間で売上が1/3になってしまいました。
ビールメーカーにならって大規模装置産業化を試みて失敗したのです。

獺祭は原料を山田錦というコメだけに特定しています。酒造りに適しているからです。
地元のコメで作る酒蔵もありますが、獺祭は違います。
例えばワインだと原材料のぶどうは長距離移動できませんが、酒の原料となる米は長距離移動ができます。
私達は地元の原料にこだわらず、優秀な山田錦(兵庫県産が6割)を使っています。山口県産にはこだわらず他県の米も使っています。
これまでの慣習に一石を投じてぶっ壊そうとしているわけですから、日本の農業関係者からしたらストレスを感じているかもしれません。

お客様が幸せにならないと企業として幸せになれない

獺祭の考え方は
「大量販売の論理からお客さまの幸せ志向商品に」
どういうことかというと、一般的なマスマーケットに受けるような安いものを大量販売するやり方ではなく、ちょっと高いかもしれないけど必要なだけお酒を飲んでもらう、楽しんで飲んでもらいたい、と思いながら作っています。
背景はこうです。 私の小学生時代、大工さんの日当は500円。お酒一升瓶も500円でした。一日の日当で一升瓶がやっと1本買えたのです。
いまは違いますね。大工さんの日当だと、いまでは20本くらい買えてしまうんです。
そんな時代、たくさんお客様に飲んでもらう、というのは破綻していく方向にあります。健康を害することもあります。
これはお客さんの幸せではありません。

お客様が幸せにならないと企業として幸せになれないのです。

最大売上・最大利潤を求めない

資本主義社会のいう「取れるだけの利益をとっていく」これは違うと信じてやってきました。
私達は負け組でした。負け組のなかでどうやって生き残るかを考えた結果です。
ご理解いただきたいのは、マーケットに合わせてお酒は作っていません。長いレンジで動いていく社会構造の変化に対応してきています。
私が酒蔵を継いで35年。売上は140倍に成長しました。
これは皮肉にも売上を利益を追いかけなかったからこその結果だと思っています。
おそらくほとんどの酒蔵より利益率がたかいでしょう。売上額で言えば日本で5番目の酒蔵になったのです。

これはフランスのDassaï Joël Robuchon(獺祭・ジョエル・ロブション)。
私どもはジョエル・ロブションさんといっしょ組んでレストランをやりました。
「獺祭は儲かっているから、飲食業にも手を出して、世界中にレストランを展開しようとしている」と思われる人もいるかも知れませんが、違います。
フランスで日本酒の売り方を見ていると本当にひどいんです。フランスの超高級レストランに日本酒が入っていますが、品質がひどい酒しか入っていません。
そこのソムリエに話を聞いてみると、「日本の酒蔵は来て文句言わない」と。
日本酒をワインと同じような品質管理で長期保存して出されると劣化してしまうのに、それに対して誰も文句を言わないんですね。
そこで、フランス市場に、まずは自分たちでいいお酒を見せよう、と思い、慣れていないけど飲食業をやってみよう、はじめたのがDassaï Joël Robuchonです。
これも利益を求めてのことではないんです。
これは、どうやったらフランスの人たちに日本酒の美味しさがわかってもらえるかを考え、将来的に獺祭のためになるかを考えた結果です。
それに、美味しいものを提供しないと、罪ですよね。
日本人じゃないからといって日本酒ならなんでもいいというわけではないでしょう。

獺祭ブランドとデザイン

みなさんは、よく色々日本酒のパッケージを見られていると思いますが、獺祭という商品は品種がすくない。
私たちはマーケットを刺激していこうとか考えていません。多品種少量のやりかたも多くありますが、獺祭は違います。獺祭という一つのブランドだけです。
欲しくもない酒をガブガブ飲ませるのは間違いです。
納得して買ってもらいたいのです。
今回のテーマは「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」の化粧箱とラベルです。
私どもはかつて旭富士という銘柄で作っていましたので会社の名前は旭酒造です。
獺祭の字は地元の高校の書道の先生に書いてもらいました。30年使っています。
使い回されないラベルデザインを求めてオリジナルで和紙に墨書きでシンプルにつくりました。当時は珍しいことでした。

これはちょうど1年前の2018年の西日本の集中豪雨災害で被害を受けた4合瓶(720ml)58万本の酒をこのラベルで売り出しました。
同郷の弘兼憲史先生に描いてもらって、義援金を募りました。

獺祭のデザインがずっとこのままでいいとは思っていません。
私達はこれまで、獺祭って、日本酒って、こうあるべきだ、と思って作ってきました。デザインもそうです。
地元で作っていないコメ=山田錦だけを使う、というのは、地元で抵抗を受けましたが、美味しいお酒を作って理解してもらえばいいという気持ちでやってきました。
しかし、この中でマンネリやお客さんの変化も感じはじめています。
そこで今回デザインへの挑戦をみなさんにお願いしたいと考えました。

ありがとうございます。


会場となった文喫(六本木)。アート、デザイン、ビジネス、食、人文科学や自然科学、文学など、常時3万冊の本を揃える。
選んだ本は3つのスペースでくつろぎながら読めるほか、購入し持ち帰ることもできる。